自然環境復元とビオトープ
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ビオトープとは
ビオトープという言葉は「生物の生息空間」という意味を持ちます。それは森、川など自然界の様々な場所に存在しています。最近、失われた自然を取り戻すため、人工的にビオトープを作る(創出)取り組みが行われています。一般的にこの人工的に作られたものを「ビオトープ」として指すことが多いようです。また、日本においては水辺のビオトープを創るのが多いみたいです。
地域の在来生物の生息場所として機能するビオトープを創る
すでに都市化した場所や生物の生息場所が無くなった場所にビオトープを創る場合、最初の住人である生物を入れてあげる必要があります。そのとき注意したいのが以下のルールです。このルールはあくまでも生態系を保全するためや環境教育のためにビオトープを創るときのルールです。
- 園芸種や外来種は持ち込まない
- 地域に生息する種類でもその地域以外で採取した物以外は持ち込まない
- 生物のバランスが取れた生態系を目指す
園芸種や外来種は持ち込まない
すでに都市化した場所や生物の生息場所が無くなった場所にビオトープを創る場合、最初の住人である生物を入れてあげる必要があります。そのとき注意したいのが入れる生物の種類と採集場所です。原則的なルールはビオトープを創る場所の周囲の生態系から入れてあげるのが望ましいでしょう。よく、スイレン等の熱帯地方原産の水草を入れているビオトープを見かけますが、日本の元々の生態系には無かったもので、地域の自然環境保全には不適切です。
地域に生息する種類でもその地域以外で採取した物以外は持ち込まない
地域に生息する生物だからと言って、ペットショップやホームセンターなどで買ってきたものをビオトープに入れてはいけません。例えばメダカは絶滅危惧種にもなりビオトープ生物としては人気が高い魚で販売されています。販売されているメダカはどこで採取されたものか分からないことが多いので、これを入れてしまうとその地域のメダカ特有の遺伝子に影響を与えることになります。生物はその地域ごとに固有の遺伝子を持っており、その固有の遺伝子を守ることが生態系の保全につながります。
生物のバランスが取れた生態系を目指す
ビオトープのシンボル的な存在として絶滅危惧種を多く入れ、自然環境保全とするビオトープを見かけます。悪いとは言いませんが、良く見ると普通にあるべき普通種の多様性が低く、絶滅危惧種に偏重した生物種の構成になっているのもしばしばです。生き物や生態系のありのままを復元したり環境教育をしようと思えばふさわしくない状況と考えられます。普通の在来種の多様性と希少種のバランスを考えた生態系を創るのが良いと考えます。
ビオトープを創る
自然環境保全科・自然環境研究科では環境復元実習の一環として実際にビオトープを創ります。また、環境教育科・自然環境研究科では本校が創ったビオトープやその生物について環境教育プログラムを実施しています。
水辺ビオトープ造成の流れ
手順① 地域の生物の調査
ビオトープを創る地域の生物を調べます。どこに何がどれくらいいたかを記録し地図上でプロットします。GPSとGISを利用すると作業は効率的に進みます。また、生物だけでなく地域にどのような環境があるかを記録します。学校ビオトープの場合この段階からこども達に参加してもらうと地域の生態系も分かり環境教育の効果は高くなります。
手順② ビオトープの設計
ビオトープの設計をするためにまず現地の測量をします。特に水辺ビオトープでは高さの測量が欠かせません。それは、高い所に水は流れないからです。それをもとにCADという設計ソフトを使用し、土の切り盛りや護岸の設置方法などを図面化します。
手順③ ビオトープの施工(工事)
作成された設計図をもとに、池の本体、水路、配管など必要な工事を行います。スコップを使用して人間の力だけでは作業効率が悪いため、様々な建設機械を使用します。穴掘りや護岸の工事が済むとビオトープに適切な植物を植えたり、種子を撒いたりします。
手順④ モニタリング調査
ビオトープの完成後、生物の様子(種類や数)がしだいに変化していきます。この様子を毎年の調査で明らかにしていきます。例えば外来生物の侵入状況や絶滅危惧種の増減など今後の管理に役に立つデータが得られます。
手順⑤ 生物管理
生物の多様性を高くするために繁茂しすぎた植物は間引きします。また、外来種については出来る限り駆除します。樹木などは適切に枝を払ってやります。それは樹形を整えるとともに風通しを良くすることにより、病気や害虫の抑制になります。
手順⑥ 環境教育
学校ビオトープでは工事やビオトープの生物調査等を環境教育の一環としてこどもと一緒に行うことがあります。また、生態系の仕組みや生物保全、ビオトープについて等を小学校へ赴き環境教育の出前授業を行うことがあります。