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アザミの形態的多様性を記録する

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佐渡島及び弥彦山塊・米山におけるナンブアザミ節の形態的多様性とその地理的パターン

◆アザミとは

キク科アザミ属に分類される植物で、初夏頃に咲くノアザミ(Cirsium japonicum)が一般的によく知られています。 花の色はピンク~紫色で、葉は切れ込みがあり、鋭い刺があります。

今回の研究では、秋に咲くナンブアザミ(Cirsium tonense var. tonense)を対象としました。 ナンブアザミの仲間(ナンブアザミ節)は、変異(花や葉の形が個体ごとに違う)が多いことで知られています。

  佐渡島のアザミ
◆佐渡島におけるナンブアザミの形態的多様性

新潟県の佐渡島にはナンブアザミとサドアザミ(Cirsium sadoense)が分布しています。 両種の形態的な違いは、主に総苞片の角度(花の基部につく緑色の鱗片)や葉の切れ込み具合などです しかしながら、両種の形態は連続的で、典型的な形態を持つ個体間には移行的な個体が存在しているのが観察されました。 そこで、個体の形態的多様性を明らかにするには、多くの分類形質を計測し評価する必要があると考えました。

 佐渡島で確認された個体
◆どうやって調査したのか?
まず、アザミが生育していそうな場所を佐渡島内で探しました。 次に、佐渡島内のアザミと比較するために、本州側の山地(越後)でも同じように調査を行いました。 結果、佐渡島内では45個体、越後では18個体のアザミを確認しました。 そして、これらの個体の17項目の形質を一つ一つ計測し、整理して解析し、その解析値を採集した地点ごとに地図上にプロットしました。
◆佐渡島の個体の特徴
解析の結果、佐渡島と越後のアザミを比較すると、佐渡島のアザミの花は総苞片が長く幅があり(d,e,f)、総苞は大型で幅(j,r,k)があり、葉は大型で葉幅が広く(m,t)、深く切れ込み刺が長い(p,q)ことが分かりました。
花の解析結果

 花の解析結果

葉の解析結果

 葉の解析結果

◆佐渡島の個体は形態的多様性が高い

解析結果を地図上にプロットすると、佐渡島のアザミ集団(大~小サイズの様々な●が分布)の中に、越後のアザミ集団(小さいサイズの●のみが分布)がもつ形質が含まれていることが分かりました。 すなわち、佐渡島のアザミは花や葉の形質が多様であることが示されました。

 花形質の地理的パターン

 葉形質の地理的パターン

◆なぜこんな結果になったのか?

佐渡島のアザミの形態的多様性が高いのかは、現時点で明確な答えはありません。 今回の研究は基礎的な研究であり、今後、この形態変異を生み出すメカニズムを解明することで、生物の進化や適応に関する新しい知見を得ることができるかもしれません。

このような植物の生態研究をしたい人は?

自然環境保全科、環境教育科、自然環境研究科のいずれかの学科に入学し、2年生の植物研究室(旧:植物生態野外実習)に所属すると調査研究に携われます。