希少植物の生態研究(ヤマトグサ)
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佐渡島におけるヤマトグサの分布と環境条件の関係
◆ヤマトグサとは
ヤマトグサ(Theligonum japonica)は,日本と中国に分布するアカネ科(Rubiaceae)ヤマトグサ属の多年生草本です。ヤマトグサ属は北アフリカ,地中海地方,小アジア,中国西南部から日本に4種が分布し,日本ではヤマトグサ1種のみが生育しています。
秋田県から熊本県にかけての24府県に点在しており, 北限は,日本海側では秋田県で,生育地の多い太平洋側では茨城県です。本種は雄しべが垂れ下がる独特な花を咲かせ(写真)、花粉は風で運ばれ、種子はアリに散布されると言われています。
◆ヤマトグサの隔離分布
ヤマトグサは、秋田県から熊本県にかけて点々と隔離分布していて、17の府県のレッドリストに掲載されています(図1)。にもかかわらず、佐渡島では島中のいたるところでヤマトグサの生育がみられます。
佐渡島で、ヤマトグサがどんな環境に生育しているかが明らかになれば、絶滅危惧種ヤマトグサの保全につながる知見が得られるかもしれません。そこで、佐渡島において、植物研究室の学生(2年生)と共に、ヤマトグサの分布調査を行って、得られたデータを地理情報システム(GIS)で解析しました。
◆佐渡島でのヤマトグサ分布調査
佐渡島中の道路を車で走りながら、また、登山道を歩きながら、ヤマトグサを探して、117ヵ所の生育地点を見つけました。ヤマトグサは、①天然スギ林、②二次林、③人工林、など、様々な林相の森林の林床や林縁に生育していました。
ヤマトグサといっしょに、アカソ、ウワバミソウ、フキ、フッキソウなどが生育していました。GISによる解析で、ヤマトグサは、沢沿いなどの湿った林床に生育する一方で、夏に霧が発生することにより空中湿度が保たれる高標高地では、尾根でも生育が可能となっていることが明らかになりました(図2)
ヤマトグサがどんな特性で、高い空中湿度に対応しているのか、また、全国のヤマトグサの隔離分布にも霧が影響しているのか、などについて、これから調べていく予定です。
本研究は、第19回こしじ水と緑の会の朝日酒造自然保護助基金から助成を受けたものです。
このような植物の生態研究をしたい人は?
→自然環境保全科、環境教育科、自然環境研究科のいずれかの学科に入学し、2年生の植物研究室(旧:植物生態野外実習)に所属すると調査研究に携われます。