【ニュース】フチグロトゲエダシャクのメスを新潟県で初採集しました!
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- 【ニュース!】新潟で初記録!フチグロトゲエダシャクのメスを発見!
本校の学生が新潟で新潟で初採集の、
フチグロトゲエダシャクのメスを
発見しました!
「フユシャク(冬尺)」とは
晩秋から早春に出現するシャクガ科のなかまで、日本には35種ほどが生息しています。最大の特徴としてはメスの翅(はね)が退化しており、とてもガには見えない姿をしています。今回発見したガはこのフユシャクの仲間で、「フチグロトゲエダシャク」です。
フチグロトゲエダシャクとは
1960年代まで生息環境も不明で、採集記録もほとんどないガでした。最近になり、やっと全国で点々と生息が確認されてきました。しかし日本海側では現在でも数か所しか確認されていません。
▲フチグロトゲエダシャク のオス
ガでは珍しい「昼行性のガ」で、新潟でもオスが少しずつ確認できるようになってきました。ですがメスに関しては新潟での採集記録がなく、詳しい生態も解明されていませんでした。
フチグロトゲエダシャク発見の体験記事
今回フチグロトゲエダシャク のメスを発見したのは自然環境研究科2年生の和久井龍君です。和久井君のインタビューをもとに作成した記事です。
和久井君がフユシャクに興味を持ったのは高校3年生でした。フユシャクを調べていくと、フチグロトゲエダシャクが有名どころの1種でしたが、知ったのはその時が初めてでした。
J-ecoに入ってからは、昆虫の講師の専門分野がガだったこともあり、フユシャクにより興味を持ち、1年生の3月にフチグロトゲエダシャクを自分で探しに行きました。しかしその年は時期を見誤ってしまい、フチグロトゲエダシャクは全くいなかったそうです。
▲実習中の和久井君。昆虫を専攻しており、昆虫全般オールマイティに学んでいる。
2年生になってからは今年こそ!と思い、だいぶ早い時期から動きました。和久井君は、同じ学年で一緒に昆虫を学んでいる近藤君とK君と一緒に、下見をしに2月中旬に新潟市の某所を訪れていました。しかし、下見だけのつもりだった場所に、フチグロトゲエダシャク のオスが飛んでいるのを近藤君とK君と共に発見します!
▲「ふわふわ~!」初めて見たフチグロエダシャクのオス
オスがいるということはメスもいるはずです。和久井君たちは一生懸命メスを探しましたが、この日はメスを見つけることができませんでした。メスが羽化するのには、おそらく時期が早すぎたんだなと考えました。ちなみにフチグロトゲエダシャクは枯葉の下や土の中で越冬と考えられているため、見つける難易度が高くなります。
3月上旬、和久井君たちは再びメスを探しにきました。前回と違いオスがたくさん飛んでいましたが、やはりメスを見つけることができません。そんな中、和久井君は1匹のオスの動きがおかしいことに気が付きました。そのオスを根気よく追いかけ、よく観察してみると、地面で何かをつかむような動きをみせました。
▲オスが何かをつかんでいる?
近づくとオスは逃げてしまいました。が、逃げたその後には・・・
そこには翅が退化したフチグロトゲエダシャクのメスがいるではありませんか!
「いたーーーーーー!ようやく見つけた!」
フチグロトゲエダシャクのメスは、新潟での初採集です!!
今まで見たどのエダシャクよりも存在感が大きく興奮したそうです! タッパーに入れて観察してみると、もふもふでプリプリだなぁ、脚の力が強いなぁ、全然動かないな、コーリング(オスを呼んでいる)しているのかな、と色々なことを感じました。
▲交尾の瞬間も撮れました!
最後に噂に聞いていたフェロモントラップをしてみることにしました。ガのフェロモンは有名で、知識では知っていましたが実際にやってみるのは初めてです。タッパーに入れたメスを置いてみると、ものの数分で多数のオスがやってきてびっくりしました。たくさん来るだろうとは思って今いたが、こんなにすぐに来るとは予想外でした。
和久井君に質問!
Q.今まで新潟でメスが見つからなかったのはなぜだと思いますか?
メスは地中すれすれの場所にいて、しかも枯草と同じ色なので見つけるのがものすごく難しいです。また、他のフユシャクは夜行性が多いので、街灯などで見つけることもできるのですが、フチグロトゲエダシャクは昼行性なのでそれもできない。採集地もただ広い草原なので手がかりなどもない。
生態もよくわかっていないので手掛かりがオスしかないんですよね。それと、今回僕がメスを見つけた場所だけが周りと比べてすごく暖かく感じたので、ちょっとした地形がフチグロトゲエダシャクのちょうどよい温度で安定した場所だったのかもしれません。
Q.今回の発見について、改めて一言お願いします
去年からずっと探していて、オスだけでも嬉しいのに、メスも見つけられられるなんて本当に嬉しいです。フチグロトゲエダシャクはまだまだ個体数が多いように思いますが、生息地が限られていて生態がよく分かっていないことも多いです。今回の発見で生態が少しでも解明され、生息地を守っていけるようになればと思います。
※この記事は2021年3月時の内容です