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「チョウを守るには植物を守れ!」
ジャコウアゲハ保全調査

<研究の背景>

農業用水路や排水路などを整備する農業農村整備事業では、工事を行う前に周辺の自然環境を調査します。もし工事予定地で希少な動植物が見つかった場合には、その影響を十分に検討し、必要に応じて保全対策を行います。

今回、新潟県阿賀野川流域で進められているかんがい排水事業の事前調査において、工事予定区域で新潟県の希少種に指定されている「ジャコウアゲハ」の生息が確認されました。

そこで、農林水産省からの依頼を受けて本校ではジャコウアゲハと、その幼虫が食べる植物である「ウマノスズクサ」について、生育状況や生息状況の調査協力を行いました。

01.ジャコウアゲハってどんなチョウ?

ジャコウアゲハは、アゲハチョウ科に属する大型のチョウで、日本でもよく知られている種類です。名前の「ジャコウ(麝香)」は、幼虫や成虫が麝香のような独特の匂いを出すことに由来しています。

このチョウの大きな特徴は、幼虫が特定の植物しか食べないことです。

ジャコウアゲハの幼虫は、ウマノスズクサ属の植物をほぼ唯一の食草としています。 そのため、ウマノスズクサがなくなると、ジャコウアゲハも生きていくことができません。 近年は、都市化や河川改修などによってウマノスズクサが減少し、それに伴ってジャコウアゲハも減少している地域があります。

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図1.ジャコウアゲハ
02.ウマノスズクサとは?

ウマノスズクサは、ウマノスズクサ科のつる性多年草で、日本では里山や河川周辺などに生える植物です。 名前は、花の形が馬につける鈴(馬鈴)に似ていることから付けられました。

この植物は、河川敷や水路の周辺など、洪水や草刈りなどで環境がかき乱される場所に多く見られます。 そのため、人の管理や自然の攪乱がある環境で生きる植物だと考えられています。

図2.ウマノスズクサ
03.どんな調査をしたのか?

施工予定区域の水路周辺で、次のような調査を行いました。

植物調査
  • ウマノスズクサの生育場所
  • 個体数や生育状況
  • 草刈りや除草剤の影響
  • 周辺の植物の種類
昆虫調査
  • ジャコウアゲハの成虫の確認
  • 卵や幼虫の数
  • 蛹(さなぎ)の有無

これらの調査から、この場所でウマノスズクサの生育状況とジャコウアゲハが繁殖しているかどうかを確認しました。

図3.調査風景
04.調査の結果

調査の結果、施工予定区域には予想より多くのウマノスズクサが生育していることが分かりました。

ある時期には草刈りや除草剤の影響を受けていましたが、それでも個体は維持されていました。 また、草刈りが行われている場所では、個体にダメージは見られるものの、草刈りが行われていない場所よりも生育が良い傾向が見られました。

これは、ウマノスズクサが日当たり(光環境)に強く影響を受ける植物であるためと考えられます。さらに、ジャコウアゲハの卵や幼虫も多く確認され、秋には蛹も見つかりました。

このことから、この場所でジャコウアゲハの生活史(ライフサイクル)が完結していることが確認されました。

図4.ジャコウアゲハの卵と幼虫
図5.ジャコウアゲハの幼虫
図6.ジャコウアゲハの蛹
05.保全活動

今回調査した水路から約1kmの範囲でも同様の調査を行ったところ、複数の地点でウマノスズクサとジャコウアゲハが確認されました。

そのため、施工予定区域の水路で確認されたウマノスズクサは、今回の調査結果をもとに、生育に適していると考えられる別の場所へ移植する計画が進められています。

本校では今後も、ジャコウアゲハとウマノスズクサの生育地・生息地の調査やモニタリングを通して、この保全活動に協力していく予定です。

ジャコウアゲハは、特定の植物に強く依存して生きている昆虫です。 このような生き物は、環境が少し変化しただけでも生息が難しくなります。 しかし、こうした生き物が生きている環境は、 多くの生き物が共に暮らせる豊かな自然環境でもあります。 ジャコウアゲハとウマノスズクサを守ることは、 地域の自然環境を守ることにもつながるのです。

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